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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》古美術品「国外流出」

中国に吸い込まれる「日本の宝」

2020年1月号

「日本に古くから蓄積されてきた中国の骨董品、美術品がどんどん海外に流出している。もう二度と戻ってくることもなければ私たちの目に触れることさえもない」
 東京で古美術商を営む男性はこう語る。「インバウンド消費」や「爆買い」という言葉が使われ始めてしばらく経つが、中国人による日本国内での消費行動は、家電製品や化粧品ばかりではない。中国の業者やバイヤー、コレクターに加えてブローカーなどが日本国内にある骨董品を買っていく。また、日本人のコレクターや私立美術館が自らコレクションを手放すケースもある。骨董品取引の現場で何が起きているのか。

中国企業による買い付けと勧誘

 大阪市北区、梅田から東に少し離れたところに、SoWAsというビルが立っている。ここに拠点を置くのが、「中国美術SoWAs」のブランドで中国の骨董品の買い付けやオークションを開催しているチャイニーズアート株式会社だ。
 大阪の骨董街といえば、老松町が有名。同町で骨董商を営む店主が語る。
「SoWAsの名前が知られるようになって・・・