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経済

「銀行クライシス」が着火寸前

金融界こそ「非常事態」の只中

2020年4月号

 金融業界では、新型コロナショックの影響がいよいよ本格化し始めてきた。
 金融市場の様相を一挙に緊張させたのは三月十七日のこと。契機となったのは、日銀がこの日に実施した資金供給オペだった。日常茶飯事のように行われている市中銀行への資金供給オペがなぜ、そんな結果を招いたのか。それは、対象資金がドル資金だったからにほかならない。日銀はこの日、約三百二十三億ドル(約三兆四千億円)のドル資金を放出した。
 その背景にあったのは、大手銀行クラスにも及んだ、ドル資金調達難である。同十六日、日米欧の六中央銀行がドル資金の協調供給を拡充することで合意したのだが、その翌日、日銀がいち早く巨額のドル資金供給に動いたのは、それだけ邦銀がドル資金調達に苦慮し始めていたからだった。
 ある邦銀関係者はその事情をこう説明する。
「ドル資金調達のスワップ市場でスプレッドが予想以上に急上昇してしまった」
 スプレッドは資金調達のコストであり、円資金との交換でドル資金を調達する際のコストが跳ね上がったということだ。国際金融市場において、非常時にドル資金確保の動きが強まる・・・