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連載

西風 469

不運な大発見「京都新城」

2020年6月号

 緊急事態宣言下の京都で考古学ファンを沸かせる、文字通り「歴史的発見」があったが、あまり注目されないまま埋没してしまった。五月十二日、京都市埋蔵文化財研究所は、豊臣秀吉が死の直前、慶長二(一五九七)年に築いた「京都新城」の遺構である石垣と堀の跡が京都御苑(上京区)の一画で見つかったと発表した。
 京都新城は秀吉が最後に造った城とされ、当時の文献に「太閤御屋敷」などの呼び名で登場。存在したことは確かだが、正確な位置を示す物証はなく長らく「幻の城」だった。その遺構の発見は「今世紀最大の考古学上の発見」といわれるほどで、本来ならマスコミがこぞって大騒ぎしても不思議ではない。ところが、折からのコロナ禍の真っただ中での発表とあって、新聞には一面に掲載されたもののサイド記事扱いとなり、TV局も現地での取材もままならない。こうした考古学上の大発見にはつきものの、一般向け現地説明会も実施が見送られたのだ。
 発見された石垣は南北方向に約八メートル。「野面積み」と呼ばれる自然石を巧みに積み重ねた安土桃山時代の石垣の特徴を備え、高さ一~一・六メートル、三、四段が残っていたという。上部は・・・