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連載

日本の科学アラカルト 118

コロナ禍で「実験ストップ」の逆境 試される科学・技術立国の研究者

2020年6月号

 日本の科学・技術発展の一翼を担う、各大学や研究機関の活動に大きなブレーキがかかった。原因は新型コロナウイルス感染拡大であり、特に緊急事態宣言発出以降、研究活動が停滞した。仮に宣言が解除されて研究活動が再開されても、今後予想される第二波、第三波が襲来すれば再びストップすることも考えられる。経済活動の停滞や再開については大いに議論されるが、研究活動のそれについては一般にはあまり注目されることがない。研究活動の脆弱性が明らかになると同時に、課題が徐々に浮き彫りになっている。
「緊急事態宣言が出た後はウェットな実験は完全に止まっている。どれだけ速やかに再開できるかが重要だ」
 関東の国立大学で生物系の研究に携わる准教授はこう漏らした。「ウェット」というのは、生命、生物研究の分野でよく使われ、実際に細胞などを使った実験のことを表している。対義語はドライであり、コンピューターを使ったシミュレーションなどを「ドライな研究、実験」などと表現する。この准教授の研究室では現状、オンラインで大学院生などメンバーとのやり取りを続けるほか、可能な範囲のドライ実験などを継続しているが、それに・・・