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連載

現代史の言霊  第29話

九月の犬笛 -一九八〇年の米大統領選-
伊熊 幹雄

2020年9月号

《米国人の誇りは丘の上の輝く街》
ロナルド・レーガン
(米国第四十代大統領)

 米国の大統領選は九月の第一月曜日「レーバー・デー」で幕を開ける。今年は九月七日。共和、民主両陣営がどう臨むかによって、選挙戦の基調が決まる。
 四十年前の一九八〇年のレーバー・デーは、九月一日だった。
 現職ジミー・カーター大統領に挑戦した、共和党のロナルド・レーガン候補はこの日、自由の女神像が見える「リバティー・ステート・パーク」(ニュージャージー州)に立った。自由の女神を背景にして、「自由の国」米国を救うのは自分であると訴えた。
 レーガンは、各種の世論調査で「米国史上、最も偉大な大統領」の上位に登場する。現在の共和党員の多くにとって、「戦後、最も偉大な大統領」であるのは間違いない。傲岸不遜のドナルド・トランプ大統領でさえ、「私は史上最も偉大な大統領だ」などとうそぶくのに、「自分はレーガンより偉い」と言うのはためらうようだ。
 レーガンは選挙戦の口火を切る演説を、こう締めくくった。
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