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連載

Book Reviewing Globe 436

コロナの世が求める「ケインズ革命」

2020年9月号

 コロナ危機は一九三〇年代の大恐慌を上回るほどのパンデミック大不況をもたらすのではないか。こんな不安を人々は抱き始めている。需要は蒸発する、失業が増える、輸出は激減する、石油価格は下落する、債務が激増する、そして金融システムが崩壊する……。
 頼みの綱の財政金融政策がいずれは手詰まりとなり、各国とも保護主義とナショナリズムとポピュリズムに傾斜し、世界秩序が崩落する危険性がある。第一次世界大戦から第二次世界大戦の間の、両大戦間の危機の二十年のような状況を世界は迎えるかもしれない。
 この危機の二十年からの脱出の骨太のマクロ戦略を描いたのがケインズ主義の生みの親であるジョン・メイナード・ケインズだった。ベルサイユ条約のドイツ賠償条項が第一次大戦後の平和を圧死させる構造にあることに警告を発し、大不況を克服する上での政府の積極的財政出動と個人消費を作り出すための市場介入を説いた。そして、戦後の国際経済秩序を構想し、実現に向けて働いた。ケインズは、大学教授であり、哲学者及びエコノミストであり、政治任用の政府高官であり、コラムニスト及び編集者であり、・・・