三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

今さら「アビガン」販売承認の奇怪

効果も安全性も「疑問」だらけ

2020年11月号

 富士フイルムホールディングスは十月十六日、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)治療薬アビガンの製造販売承認を厚生労働省に申請したと発表した。順調に進めば、十一月中にも承認予定だ。レムデシビル、デキサメタゾンに続く、三つ目のコロナ治療薬は初の「日の丸印」となる。東京五輪開催に向けて、明るい材料になると期待されている。
 富士フイルムによると、百五十六例の軽症患者を対象とした臨床試験で、プラセボ(偽薬)と比較して、体温、酸素飽和度、胸部画像が改善。PCR検査が陰性になるまでに要する日数は二・八日間短縮したという。また、動物実験で懸念された催奇形性や、インフルエンザの臨床試験で問題視された高尿酸血症は大きな問題にならなかったという。
 ただ、専門家のアビガンの評価は驚くほど低く、都内在住の内科医も「この結果は鵜呑みにできない。これまでの臨床試験の結果と整合性がない」と指摘する。
 臨床試験は「バイアスとの戦い」(元医薬品医療機器総合機構審査員)とされる。登録症例数が少なければ、実薬と偽薬にランダムに割り振っても、どちらかに重症の患者が偏るなど、予期せぬバイ・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます