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経済

JR東日本「労組解体」の副作用

待遇悪化で進む「人心荒廃」

2021年7月号

 六月二十日夕方から山手線をはじめとする主要路線が相次いでストップする障害が発生した。これについて、東日本旅客鉄道(JR東)の内情に詳しい某労組関係者は、「不穏な兆し」と指摘する。
 三年前に最大の労働組合を事実上解体したJR東は今、難局に立っている。経営者側にとって頭の痛い労組だが、安易に弱体化させると副作用も懸念される。会社側の画策で過激労組は縮小したものの、問題はより複雑化し、利用者の安全を脅かしかねない事態も進行している。
 JR東の二〇二一年三月期連結決算は惨憺たるものだった。売上高が一兆七千六百四十五億円と前期比で四〇%も下落した。営業損失は五千八百億円に迫った。今年度も、金城湯池である一都三県にまん延防止等重点措置や緊急事態宣言が断続的に出されていたため、回復の足は鈍い。

「定昇カット」で広がる動揺

 今年の春闘で、JR東は労組側の要求をことごとく却下し、八年ぶりのベアゼロ回答を行った。足元の経営状態を見ればある程度予想できていたが、労組側が驚いたのは定期昇・・・

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