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ロシア宇宙産業の無惨な「衰退」

米中二強との差は開くばかり

2021年9月号

 ロシアの宇宙開発が重大な危機を迎えた。事業の看板である「国際宇宙ステーション(ISS)」やソユーズ宇宙船事業に、過去三年間で相次いで欠陥が見つかり、国営企業「ロスコスモス」への不信感が高まっている。
 中国が自前の宇宙ステーション「天宮号」を建造し、米国では大富豪ジェフ・ベゾス氏らの民間宇宙開発が進む中、ロシアは米中の「二強」に引き離されている。来年は世界初の人工衛星「スプートニク一号」の打ち上げから、記念の六十五年だというのに、誰がこんな「墜落」を招き寄せたのか。
 ISSの最新の問題は、日本時間の七月三十日に起こった。
 ロシアの実験棟「ナウカ」が、ISSにドッキングしてから三時間後に突然、エンジン噴射を始めたのだ。このため、ISSは一時制御不能になり、最大で四十五度も傾いた。日本人宇宙飛行士、星出彰彦氏が船長を務めるミッションで、世界中の関係者がキモを冷やした。
 公式な事故調査は継続中だが、ロシア実験棟に問題があったのは明白だ。地上との交信が二度にわたって数分間途絶え、緊急脱出用の宇宙船が起動された。

予算の大幅な削減・・・