三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

安倍が「迷走」させる自民総裁選

ひ弱なキングメーカーの限界

2021年9月号

 自由民主党総裁選挙に前総務大臣・高市早苗が立候補の意志を表明し、同党幹事長代行・野田聖子も意欲を示す。結党時を含め六十五年余で四十五度目となる総裁選の歴史で、二〇〇八年の小池百合子(現東京都知事)以来、二度目の女性候補の登場、しかも、初の複数参戦となる可能性が出てきた。つい一、二カ月前まで総理大臣・菅義偉の無投票再選論が主流だった党内の空気は一変し、前代未聞の展開へと向かいつつある大きな理由は、キングメーカーの迷走である。
 『文藝春秋』誌上で出馬宣言をした高市は八月十九日、自民党幹事長・二階俊博に立候補の考えを伝えた。その後、記者団に、七月下旬に前総理大臣・安倍晋三に出馬を促したが断られ、「それなら自分が出る」と決意したと語った。
 かつて「総裁四選」を求める声が安倍周辺に広がった時、高市は「四選して国民に飽きられて辞めるのと、いったん退き、次の総裁が行き詰まった時に再び立つのと、どちらがいいか」と異論を唱えた。菅政権が行き詰まっている今、高市が安倍の出馬を求めたという話は嘘ではないだろう。ただ、額面通りには受け止められていない。高市の背後で糸を引くのは安倍だと・・・