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「欧州の盟主」になれないフランス

同盟諸国のマクロンへの「嫌悪感」

2021年11月号

 フランスは西側同盟国から無情にも裏切られた。九月十五日、米英豪はインド太平洋地域を巡る新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」創設を発表した。これに伴い、オーストラリアは米英から原子力潜水艦の技術提供を受けることになり、進行中だったフランスとの潜水艦共同建造計画を破棄した。「うそや二枚舌、軽視があった」。ルドリアン仏外相はただならぬ激高ぶりを示し、フランスは駐米・駐豪の仏大使を召還する異例の対応で抗議した。
 潜水艦契約は四百億ドル(約四兆円)規模に上り、破棄は仏経済に大打撃を与えた。だが、それ以上にフランスが味わったのは外交上の屈辱だった。ニューカレドニアなど南太平洋に海外領土を持つ太平洋国家を自任しながら、重要な協力相手であるはずのオーストラリアに袖にされた。自国の潜水艦技術に事実上疑問を呈され、欧州の軍事大国としてのプライドも大きく傷つけられた。
 オーカス創設は欧州連合(EU)全体との信頼関係も損ねた。米側はこの計画を極秘裏に進め、同盟関係にあるはずの欧州側との協議を十分に行わなかった。さらに、その発表のタイミングはEUが満を持して準備してきた初の・・・

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