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連載

をんな千一夜 第55話

祖国に棄てられた「日本人妻」
石井 妙子

2021年11月号

《中本 愛子》

 岸田内閣が誕生したが、自民党総裁が決まるまでの間、候補者四人が並び語る姿を毎日のようにテレビで見た。拉致問題の解決を最重要課題としている点では皆、一致していた。胸にブルーリボンバッジをつける国会議員は多い。「救う会」を支援しているという証で、安倍、菅元総理の胸にも、また、岸田総理の胸にも、つけられている。
「拉致問題の解決」という言葉を耳にして久しい。だが、実際には安倍政権になってからというもの少しの進展もなかった。その一方で北朝鮮に対する日本国民の憎悪や侮蔑の感情は増幅された。選挙になると安倍総理が拉致被害者家族と並び、「拉致問題の解決」を訴える姿が宣伝されただけだった。
 何を以って、「解決」とするのか。「解決」の道筋をどのように考えているのか。「解決しない」という状態が維持されていることをどう思っているのか。突き詰めた議論は聞かれないままに。
 先日、東京のJR東中野駅そばにある映画館「ポレポレ東中野」で夏からロングランとなっている「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」というド・・・