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連載

日本の科学アラカルト 140

新型コロナと戦う研究者たち ウイルスを不活化する技術

2022年4月号

 ウィズコロナの生活が始まって約二年が経過した。マスク、手洗い、うがいで自己防衛するにも限界がある。ワクチンは有効だったが、万能ではない。感染し重症化して医療現場の世話になっている患者は今も多い。
 コロナとの戦いは続いているが、直接的に最前線で戦っている職業として思い浮かぶのは、医師や看護師だ。保健所の職員や救急隊員も矢面に立たされている。また、ワクチンや治療薬を開発しようとしている研究者たちもこれに加わるだろう。数え上げればキリがないが、医学分野の研究者以外でも、それぞれにできる形で新型コロナ対策に取り組む研究者たちがいる。
 よく知られたケースは、スーパーコンピュータ「富岳」を使った、飛沫の拡散シミュレーションだろう。神戸大学の大学院システム情報学研究科、坪倉誠教授らの研究グループは、この研究により昨年十一月にスパコン研究分野で権威ある、米国のゴードン・ベル賞を受賞している。数理工学、計算機工学といった分野は、感染者数の予測などにも使われ、存在感を発揮している。
 医学分野以外でも、直接、新型コロナウイルスを叩く研究がある。ウイルスの「不活化」だ。一・・・