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連載

皇室の風 第165話

天皇家の執事Ⅲ
岩井克己

2022年5月号

 故渡邉允元侍従長とのインタビューでは、デンマークやバルト三国訪問で、戦争犠牲者への供花の際に天皇・皇后(現上皇夫妻)が言葉をかけると、戦友や遺族が、たちまち涙するほど感動する様子が話題になった。
       ◇
岩井:こうした慰藉の力、源泉は何なのか。お立場がつくってきたのでしょうか。
渡邉:色々な要素があるから簡単には説明できないだろう。陛下と皇后陛下では違うところもあるだろうし。陛下の場合は生まれながらにして皇太子。お小さいうちから自分にはその道しかない、という中で育てられた。そこに力になるものがあるし。皇后陛下の場合には二十歳代半ばで来られた時のお覚悟があったと思う。それまでは普通の生活をしておられたわけだから。その意味で違うのだろうと思うが、共通するのが「覚悟」だと思う。皇后陛下が古希の会見でご成婚を振り返って「あの日、私を皇太子妃として受け入れてくれた皇室の歴史に傷をつけることなく。あの日、私の新しい旅立ちを見送ってくれた、私と出自を同じくする庶民の期待を裏切ることなく」とおっしゃった。重い責任感でずっとやってきた、と。あれが覚悟だと思うんで・・・