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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》一票の格差

日本民主主義の「バカの壁」

2022年7月号

 緩やかな「忠告」が無視され続けて堪忍袋の緒が切れた司法と、その怒りを一時的に鎮める弥縫策を重ねるうちにポピュリストに論点をすり替えられた立法府―。「投票価値の不平等」すなわち「一票の格差」をめぐる問題の底流には、民主主義を機能させるあまたの要素の中で選挙制度の一部分だけを聖域化することでメンツを保とうとしている裁判所と、多くの弊害を知りながら抜本的な制度転換に踏み出せない国会が政治の劣化をもたらす奇妙な共謀共同関係がある。
 二〇二一年総選挙では、小選挙区の「一票の格差」の最大値は鳥取一区と東京十三区の間の二・〇八倍だった。恒例の「一票の格差」を理由とする選挙無効訴訟は全国十六の高等裁判所・支部で起こされ、「合憲」九件、「違憲状態」七件の判決が下り、最高裁判所の判断を待っている。

論理性なき司法と怠慢な国会

 二〇年国勢調査に基づき「格差」が二倍未満になる区割りを検討してきた衆議院議員選挙区画定審議会(川人貞史会長)は六月十六日、岸田文雄首相に「アダムズ方式」(都道府県ごとに人口を除数Xで割り、商・・・