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連載

日本の科学アラカルト 148

水素利用を下支え レアメタルを減らす「技術」

2022年12月号

 水素ガスには毒性はないが、極めて取り扱いが難しい気体であることが知られている。酸素と急激に結びつき爆発的に燃焼してしまう。かつて飛行船に水素ガスを使っていた時代に、ドイツのヒンデンブルク号が爆発、炎上した動画を見たことのある人も多いだろう。
 ただし、水素と酸素が反応しても水ができるだけである。この反応プロセスをゆっくりと進め、電気エネルギーを取り出そうというのが燃料電池の発想だ。アノード(負極)では水素ガス(H2)から電子(e-)が外れる。そこで生じた水素イオン(H+)がカソード(正極)側へ移動。正極では酸素(O2)が電子を受け入れて酸素イオン(O2-)になると同時に、水素イオンと反応して水(H2O)が生じる。
 極めてシンプルな反応だが、たとえば電極に水素ガスと酸素ガスを闇雲に吹き付けても電気エネルギーを取り出すことはできない。
 正極や負極の設計や、ガスの導入プロセス、電解質膜など様々な要素が組み合わされ、水素の貯蔵方法も含めて、一つのシステムを構成している。
 燃料電池自動車の普及は進んでいないが、未来の選択肢として、研究する価値は大き・・・

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