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新大学評判記 第42話

恵泉女学園大学 廃校で表出した「社会的危機」

2023年6月号

 私立の恵泉女学園大学が今年四月の入学者をもって、学生の新規募集を停止すると発表した。全国で大学や学部の新設がまだ続いているなか、女子四年制大学や主に女子を対象とする短期大学の廃校がここにきて目立っている。その中でも「東京のキリスト教系女子大御三家」のひとつに数えられる恵泉の廃校は女子大という存在の意義を問うている。
 恵泉女学園というと、大学よりも東京都世田谷区にある中学・高校一貫校を思い浮かべる人が多いだろう。キリスト教に基づく質実な教育が高い評価を受け、小田急線沿線という立地の良さもあって、進学実績も高い中高完全一貫女子校として確固たる地位を築いている。
 恵泉女学園大は、都内といっても郊外の多摩市にキャンパスを持つ四年制大学。一九二九年にクリスチャンの河井道が創設した恵泉女学園が源流だが、短大を経て、四年制大学の一期生入学は八八年四月と実は歴史は浅く、開学からわずか三十五年で幕を閉じることになった。
 中高も含め、恵泉が広く知られるのは「園芸」を学科として持ち、教育の柱のひとつにしていることだ。「学び」とともに「土や自然と親しみ、農作物をつくる」と・・・

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