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フランス「中国傾斜」の真意

台湾問題「米欧結束」は絵空事

2023年7月号

 フランスが北大西洋条約機構(NATO)でまたも「問題行動」を起こしている。六月上旬、NATOが東京に開設を計画する連絡事務所について、マクロン仏大統領が反対していることが報じられた。事務所は中国への対抗を念頭に進める「インド太平洋戦略」の一環。マクロン氏は四月上旬の訪中時にも欧州は台湾問題を巡り米国に「追随すべきではない」と発言し、物議を醸したばかりだ。NATOの対中結束に不協和音を引き起こすフランスには、どのような思惑があるのか。
 米国、そして日本にとっては大きな「裏切り」だろう。東京事務所の開設は、安倍晋三元首相がNATO本部を訪れて演説した二〇〇七年以来、話し合われてきた。NATOがインド太平洋地域への影響力強化に動くなか実現まであと一歩に迫り、冨田浩司駐米大使は五月上旬、事務所開設に向けて調整していることを明かしていた。
 だが、これに待ったをかけたのがマクロン氏だ。英紙フィナンシャル・タイムズによると、仏政府当局者は東京事務所に否定的な意見を述べたうえで、「NATOと中国の緊張につながる」と説明。マクロン氏はある会合で、NATOの活動範囲がインド太平洋・・・

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