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チュニジアが「難民ビジネス」に本腰

独裁政権と欧州の薄汚い「癒着」

2023年7月号

 アフリカ大陸からの移民・難民流入を防ぐため、欧州連合(EU)と加盟各国が、北アフリカのチュニジアに支援を求めている。二〇一五年の移民危機の際に、トルコ政府に協力を求めたのと同様に、チュニジアのカイス・サイード大統領に、「移民が欧州に渡航するのを止めて欲しい」と頼んでいる。
 サイード大統領は近年、強権的な統治手法に傾斜していて、国際人権団体の評判は芳しくない。欧州各国もこれまでは同大統領に批判的だったが、移民問題での協力を得るため、最近はチュニジア批判を封印している。
 チュニジアは一〇年十二月、「ジャスミン革命」と呼ばれる民主化運動で、「アラブの春」の先駆となった。独裁者ザイン・ベン・アリ大統領は翌一一年一月、家族とともにサウジアラビアに逃亡し、民主主義への移行が始まった。
 一九年に当選したサイード大統領は、それまでの人生の大半をチュニス大学の法学教授として過ごした。気難しそうな風貌と堅苦しい言葉遣いが、国民の目には新鮮に映った。国民は、ジャスミン革命後の民主派の試行錯誤や、一向に無くならない腐敗政治にうんざりしていたのだ。

「古典的な買収の手法」・・・

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