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EU外交「内部抗争」が末期症状に

ガザ一大事で朝令暮改の醜態

2023年11月号

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘を巡り、欧州連合(EU)が無秩序ぶりを露呈している。いったんはハマスの攻撃に対する「制裁」としてパレスチナ支援の即時停止を表明したが、すぐに撤回。その後、今度は支援枠の拡大を発表するなど内部で意見が分裂し、対応を二転三転させている。EUは国際情勢の重大局面で存在感を示すどころか、組織の体すらなしていない。
 混乱が始まったのは、ハマスが攻撃を始めて二日後の十月九日だった。EUの行政執行機関にあたる欧州委員会のバールヘイ委員(近隣国政策・拡大交渉担当)が、X(旧ツイッター)への投稿で、パレスチナ支援について「全額六億九千百万ユーロ(約一千八十億円)の見直し」と「すべての支払いの即時停止」を表明したのだ。EUはパレスチナにとって最大の支援元で、低所得家庭の支援などを名目に援助金を支出してきた。即時停止はイスラエルとの連帯を強く示すことになるが、パレスチナの一般住民にも影響が出る強硬手段だ。
 しかし、この「発表」は加盟各国などに知らされていなかった。スペイン、ポルトガルなどから批判が噴出し、欧州委・・・

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