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経済

伊藤忠が諦めない「コスモ石油」

岩谷産業で終わらない「争奪戦」

2024年1月号

 稀代のアクティビスト村上世彰は、しょせんグリーンメーラーだった―。証券市場に落胆が広がる一方、石油関係者の間ではこんな皮肉が囁かれている。
「ENEOS、出光はホッと胸を撫で下ろしていることだろう」
 石油元売り三位、コスモエネルギーホールディングスと旧村上ファンド系陣営の間で、一年半に及んだ経営権をめぐる攻防が決着した。村上側は保有する約二〇%のコスモ株を一千五十三億円で売り抜けたのである。売却益はざっと四百三十億円の荒稼ぎだ。
 村上は当初、二大元売り論を唱え、ENEOSに対抗する出光興産とコスモの経営統合、またコスモの風力発電子会社の株式上場など「再編」を吹聴していた。が、コスモの買収防衛策発動が現実味を帯びるや、利ザヤの確保を急いだのだ。コスモ株の売却先はLPガスの販売・設備大手、岩谷産業である。同社はコスモのホワイトナイト(友好的買収者)だったのか、そうではない。
「買います。引き続きよろしくお願いします」
 岩谷首脳がこう通告してきたのは、二〇二三年十二月一日のディール実行の数日前。コスモ会長の桐山浩、社長の山田茂は驚いた・・・

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