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連載

金融の世紀

第13回【USスチールの創設】
黒木 亮

2024年1月号

昨年十二月十八日、日本製鉄が約二兆円でUSスチールを買収すると発表した。一九六〇年代まで世界一だった鉄鋼会社で、誕生から百二十年余りを経て、日本企業の傘下に入ることになった。
 同社を誕生させたのも、ピアポント・モルガンだった。狙いは、他の産業同様、トラスト(企業合同)による価格競争の回避である。
 一九〇一年、ピアポントは、「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギーのカーネギー・スチール社、自己の支配下にあったフェデラル・スチール社、ナショナル・スチール社、ナショナル鋼管社、アメリカン・スチール・アンド・ワイヤ社、スペリオル湖・コンソリデーテッド鉄鉱山社など、十以上の鉄鋼関連企業を合併させ、世界最大の鉄鋼会社、USスチール社を創設した。
 合併交渉は、カーネギー、スペリオル湖・コンソリデーテッド鉄鉱山社を持つロックフェラーという二人の巨頭との価格交渉を含むタフなものだった。
 USスチールは、米国企業としては初めて十億ドルを超える十四億ドル(現在の価値で四百九十七億ドル=約七兆一千十三億円)の資本を持つビリオン・ダラー・カンパニーとなった。同社の株式を・・・

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