ガザ紛争停戦の「頼みの綱」

　関係者の間で、「秘密送金」を知らない者はいなかった。天然ガス大国・カタールからざっと三千万ドルもの札束を積んだ車が毎月、イスラエル経由でガザ地区に入っていった。金主はカタールだ。表向きは二百万人を超えるガザ地区の住民支援だった。
　イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相ももちろん、知っていた。イスラエル政府の要員が同行して、札束が手渡されるのを記録した。わかっているだけで、十年以上、莫大なカネが無償でガザに送られ続けた。
　ネタニヤフ首相にとっては、今となっては後悔の種である。政敵に攻撃材料を与えてしまった。ガザの武装勢力ハマスは、カタールの送金でせっせと武器を買い込んで、昨年十月の奇襲作戦を準備したからだ。
　イスラエル、カタール両国政府は、送金によって平穏を買えると考えていた。ガザ地区はほとんど産業らしい産業がない。住民はこの種の外からの無償支援で暮らしていくしかなかった。
　ふだんなら猜疑心の塊のような、イスラエルの政治家が心を許したのも、タミーム首長の人・・・