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経済

《クローズ・アップ》貝沼 由久(ミネベアミツミ会長CEO)

芝浦電子「白馬の騎士」の思惑

2025年5月号

「おれは同意なき買収なんか絶対にしない」。こう周囲に吹聴する漢がいる。その名は貝沼由久。ミネベアミツミの会長CEO(最高経営責任者)だ。
 台湾の電子部品大手、国巨(YAGEO)に同意なき買収を仕掛けられた芝浦電子のホワイトナイトとして颯爽と登場したのがミネベアミツミ。YAGEOが1株4300円でTOB(株式公開買い付け)を行うと発表すると、貝沼はそれを200円上回る4500円での買収案を発表した。
 芝浦電子を買収すると発表した記者会見で、貝沼は「海外からの同意なき買収が続くと、日本の技術がどんどん流出していきかねない」と憂国の士を演じた。まさに「昭和の古き良き経営者そのもの」(上場企業社長OB)だった。
 貝沼は日本の経営者の中でも有数のM&A巧者として知られる。2009年にミネベアの社長に就任して以降、30件近いM&Aを手がけてきたが、最も有名なのが17年のミツミ電機との経営統合だ。M&Aでミネベアミツミを一気に大企業にのし上げ、社内外で功労者と名高い。
 同じくM&A巧者として知られるのがニデックの永守重信グローバルグループ代表。だが永守・・・

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