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社会・文化

渋谷を駄目にした 鉄道会社ども

再開発は100年に1度の「大失敗」

2025年10月号

 渋谷再開発が行き詰まっている。渋谷スクランブルスクエア、渋谷ストリームをはじめ高層ビルが続々建ち上がり、渋谷の弱点である高低差を解消する歩行者デッキも建設中だが、テナントを埋めるのに苦労する商業施設、客の入らない店が少なくない。高層化で建物容積が大膨張したほどには渋谷への需要がなく、雑然とした都市の魅力が消えたこともある。「街づくり」といいながら局所的不動産バブルを狙った東急グループ、JR東日本、東京メトロなど「鉄道屋」の限界が残酷なほど渋谷に映し出されている。
「渋谷には空がない」。高村光太郎の詩集『智恵子抄』ではないが、最近、渋谷駅周辺で見上げる空は極端に狭くなった。日本有数の繁華街の土地から最大限の賃貸料を稼ごうという東急、JR東日本などの邪心が高層ビルで空を塞いだからだ。罪滅ぼしに山手線などを跨ぎ、高層ビル間をつなぐ歩行者用自由通路を建設する予定だ。
 だが、地面に足をつけて人々が行き交う街路と空中の歩行者デッキは似て非なるものだ。街路は昔ながらの土地に根付いた店があり、常連客が顔をのぞかせ、一見客もふと立ち寄る。慣性と偶然が交差する。空中の歩行者デッキは・・・

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