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連載

新大学評判記 第71話

神戸大学経営学部 零落著しい「高市総理の母校」

2025年11月号

 女性初の内閣総理大臣に就任した高市早苗氏は1984年に神戸大学経営学部を卒業した。戦後間もない49年、日本初の経営学部として設置された名門学部である。「わが國の經營學ここに生まれる」の碑が六甲台キャンパスに建つ。日本を代表する数多くの経済人を輩出してきたが、近年は地盤沈下が目立ってきた。
 神戸大は1902年、日本で2番目の官立高等商業学校として創設された神戸高等商業学校を起源とする。戦後復興期、日本では産業経営や企業管理の理論が急速に発展した。経済全体を扱う経済学とは異なる、企業組織を分析・運営する「経営学」の確立が求められた。神戸大はその学問体系の形成に中心的役割を果たした。「神戸経営学派」である。
 中核を成すのは、経営戦略と人的資源管理の2分野だ。
 経営戦略では、加護野忠男氏(故人)が長年にわたり企業の現場に密着し、実践的経営理論を構築した。松下電器産業(現パナソニック)などを対象に、創業者リーダーシップや多角化経営の成功要因を分析した。後継の三品和広名誉教授は、「戦略不全」や「戦略暴走」に陥ったレナウンや日本電気などの日本企業に対する批判的な・・・

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