テイレシアスの食卓 vol.34
盛り付けが映し出す「精神性」
河井 健司
2026年1月号
ほどよく火を通して休ませた肉を、高温のオーブンで温め直し、端を切り落として形を整える。ピンク色も鮮やかな肉の断面に軽く塩をあて、そっと皿に置く。傍らには色彩豊かな温野菜の付け合わせをいくつか重ねて盛り、スプーンで静かにソースをかけ流す。仕上げに香草や食用花をふんだんに飾れば、儚くも美しい現代高級フランス料理の出来上がり。料理長の号令に従うサービススタッフの手で、出来たてのごちそうが運ばれてゆく。
こういった光景は日仏の厨房で、毎日のように繰り返されている。東京都中央区の片隅にある自店舗でも、まあ似たようなもの。しかし、残念ながら筆者はいわゆるフランス料理らしい手の込んだ盛り付けは得意としていない。たまに精妙巧緻な飾り付けが施された料理に出会うと、携わっている料理人はさぞかし大変だろうな、と思うことはあっても、何故か美しいと感じない。
料理の盛り付け作業を、フランス語でドレセ(dresser)という。この言葉をフランスの厨房で耳にしない日はなかったが、飲食業になじみの薄いフランス人が聞けば、初めは戸惑うに違いない。その理由はドレセという動詞が意味する範囲の広さに・・・
こういった光景は日仏の厨房で、毎日のように繰り返されている。東京都中央区の片隅にある自店舗でも、まあ似たようなもの。しかし、残念ながら筆者はいわゆるフランス料理らしい手の込んだ盛り付けは得意としていない。たまに精妙巧緻な飾り付けが施された料理に出会うと、携わっている料理人はさぞかし大変だろうな、と思うことはあっても、何故か美しいと感じない。
料理の盛り付け作業を、フランス語でドレセ(dresser)という。この言葉をフランスの厨房で耳にしない日はなかったが、飲食業になじみの薄いフランス人が聞けば、初めは戸惑うに違いない。その理由はドレセという動詞が意味する範囲の広さに・・・









