三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

連載

をんな千一夜 第109話

革命と戦争に散った舞姫
石井 妙子

2026年4月号

 2月、閉幕したイタリアの冬季オリンピックではフィギュアスケートで日本勢の華々しい活躍が目立った。一方、ロシア選手は「中立選手」として参加したものの精彩を欠き、この競技を長年、牽引してきた国だけに残念に思った。フィギュアスケートはバレエの素養なくしては成り立たず、日本人選手の活躍にも日本のバレエ文化が寄与している。これだけバレエ教室がある国もめずらしい。
 西洋由来のバレエがなぜこれほど日本に定着したのか。それは、ひとりのロシア人女性の存在を抜きに語ることはできない。すべての日本人バレエダンサーの源に彼女がいる。エリアナ・パブロバはまさに「日本バレエ界の母」である。
 エリアナは1897年にロシアのコーカサス地方チフリス(現ジョージアの首都トビリシ)で生まれた。キーウのトゥマンスキー家の血を引く貴族の家柄。父はロシア皇帝に仕える軍人、母ナタリアは声楽を学んだ元オペラ歌手だった。貴族家庭の常としてエリアナは5歳から家庭教師について勉強を始め、音楽やダンスもたしなみとして習い始める。だが、6歳で父が亡くなり、運命が大きく変わった。母は再婚を拒んで生活のためにオペラ歌手に・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます