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経済

「トヨタ史」から消された奥田碩

豊田家の冷酷と章男の「忘恩」

2026年9月号

 手元に、2019年版の経団連の役員名簿がある。ここには当時の現職役員だけでなく、「名誉会長」として歴代会長が掲載されており、35ページ上段には奥田碩の名前が確認できる。しかし、奥田の所属企業名や連絡先は空欄だ。隣の34ページ上段にある豊田章一郎の欄には、連絡先としてトヨタ自動車社員の名前やメールアドレスが記載されており、奥田とは対照的である。
 8月8日、その奥田が老衰のために亡くなった。4日後に日本経済新聞が訃報を打ち、その翌日にはトヨタが公式サイト上で「お知らせ」を出している。テレビ各局は、ニュース番組で奥田の功績を振り返り、財界人は奥田を称えるコメントを出した。「プリウス発売を主導した名経営者」―。こんな報道がされる中で、目立つのはトヨタの対応の不可解さだ。「ご冥福をお祈りします」という素っ気ないコメントしか出さない同社の姿勢は、今もなお「奥田vs豊田家」の禍根が残っていることを浮き彫りにした。
 豊田家による、奥田を歴史から消し去ろうという試みは、目標を達成したのだ。奥田追悼報道はすぐにメディアから消え、ネット上では、奥田を「無能経営者」と叩き、章男を「ト・・・

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