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社会・文化

「養殖マグロ」に不安山積

庶民はトロを食えなくなる

2010年2月号

 世界的な漁獲規制の強化で先行きの安定供給に黄信号がともり始めたクロマグロ。遠洋漁獲ものや海外養殖ものに代わって、国産養殖ものの生産が拡大し、事態は好転したかに見える。しかし実態は、多くの課題を抱え前途は多難だ。
 高級マグロをめぐっては、つい昨年も、環境保護団体の意向を受けたとされるモナコが、地中海産クロマグロをワシントン条約の対象に加えるように提案。今年三月に予定されている同条約第十五回締約国会議を前に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は昨年十一月、漁獲枠削減を決めた。
 こうした情勢のなか、マグロ養殖業者は二〇〇七年頃から急増。〇九年の生産量は一万トン弱(業界推定)と二年前に比べ二倍強に増加している。今年の生産量は、縮小を余儀なくされた地中海を含む東大西洋の総漁獲枠の一万三千五百トンに肩を並べる勢いだ。

無策の農林水産省


 しかし、急速な拡大の歪みは、昨年七月の集中豪雨発生時に熊本県天草湾で発生した大量酸欠死事故という形で早くも現れている。海面確保争いが激しくな・・・