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社会・文化

「オーダーメード医療」最前線

がん治療は「分進時歩」

2010年7月号

 それなりの歳になると誰しも関心をもつ病気と言えば、がんと心筋梗塞、脳卒中といった命に直結する病気だろう。いま、こうした病気の診断・治療のあり方が激変しつつある。人それぞれ個人に適した医療を可能にする「オーダーメード医療時代」の到来が、目前に迫っているからだ。
 オーダーメード医療の原動力は、ゲノムシークエンス技術の急速な進歩だ。今年、米国パシフィック・バイオサイエンス社から販売予定の最先端シークエンサーを用いれば、個人のゲノム情報を一時間以内で解読することができるという。コストも、数年の間に二、三万円まで下がるだろう。こうなれば、病気になった人のゲノム情報を片っ端から解読し、病気と関係する遺伝的要因を明らかにできる。
 オーダーメード医療の普及は、とりわけゲノムと薬の関係を研究する分野である「遺伝薬理学」で成果をあげている。ゲノム情報を参考にすれば、個別の患者に治療効果の高い薬剤を選択し、副作用を回避することが可能になる。
 例えば、乳がん治療薬「タモキシフェン」は、遺伝子の違いにより、代謝酵素が多い人と少ない人とで効果が分かれる。一部の患者では薬・・・