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政治

《罪深きはこの官僚》外山千也(厚生労働省健康局長)

「多剤耐性菌」パニックの主犯

2010年10月号

 多剤耐性菌アシネトバクターが注目を集めている。あたかも、「恐怖の菌」のような報道ぶりだが、それは見当違いだ。健康な人がこの菌に感染しても問題を起こすことはない。重症化するのは、白血病など免疫力が落ちた患者だけだ。イラク戦争の際、負傷兵の間で感染が問題となったこともあり、医学界では有名な菌である。知らぬは役人ばかりだ。不要なパニックを煽りたてたのは、長妻昭前厚労大臣と外山千也健康局長の二人。背景にあるのは、厚労省の相も変わらぬ無知と無責任だ。
 八月三十日、長妻は帝京大学病院のER(緊急救命室)や救急外来を視察した。急患を拒否しない優良病院という触れ込みで、大臣のお出ましとなった。
 ところが、九月三日、帝京大学病院幹部たちは、多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染で九名が死亡したと発表。この報告を聞いた長妻は、直前の視察で「役人に嵌められた」と激怒。即座に、事務次官をトップとした対策会議を立ち上げるように指示した。
 対策の中心的役割を担ったのが外山だ。彼は長妻の意向を忖度し、帝京大学病院への厳格な処分、全国の施設からの多剤耐性菌届け出の義務化を矢継ぎ早に・・・