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政治

《罪深きはこの官僚》渡辺 格(文部科学省科学技術・学術政策局次長)

放射能被曝拡大を招いた責任者

2011年9月号

 


 福島第一原子力発電所事故による被曝地、福島県飯舘村での東京電力の「謝罪集会」で、十五歳の女子高生の悲痛な叫びが会場に響き渡った。「将来は結婚して子供を産む夢を持っています。もしここで被曝していたら、私の夢は潰されます。もっと早く『危ないから避難すべき』と注意を促すべきではなかったのですか?」。

 責められるべきは東電だけではない。文科省が運用する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)。原子炉施設から大気中に放出された放射性物質の分布を予測するシステムだが、今回の事故ではほとんど機能せず、住民の避難に混乱を来す失態を演じた。そのSPEEDIの運用責任者こそ、渡辺格・文部科学省科学技術・学術政策局次長だ。

 飯舘村に放射性物質が大量に降り注いだ三月十五日、SPEEDI情報を使って「避難すべき」と伝えていたら村民の被曝量は大幅に低減できた。しかし実際には、二次元的な放射能汚染状況は村民に示されず、被曝量が少ない南相馬市から飯舘村方面に避難してしまう悲劇的行動を招くことにもなった。・・・