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連載

不運の名選手たち33

福田健二(プロサッカー選手)母の「遺書」に背中を押されて 
中村計

2012年9月号

 歴史が刻まれた顔。そういうものがあるとして、真っ先に思い浮かべる人物がいる。

 福田健二。プロサッカー選手だ。

 幼さと逞しさ。粗雑さと繊細さ。絶望と希望。それらの二律背反が、真っ黒に日焼けした顔の中に、ことごとく同居している。

 彼が、日本サッカー界で知名度を保っていたのは、二〇〇〇年あたりまでだ。千葉の名門、市立習志野高等学校出身で、当時から勝負強いフォワードとして注目を集めた。高校卒業後、一九九六年に名古屋グランパスエイトへ入団。九八年には十六得点を挙げ、チームのエースに成長した。二〇〇〇年のシドニー五輪では、アジア予選では代表として活躍したが、本戦では選考から漏れた。それでも、未来を嘱望された大型ストライカーであることに変わりはなかった。

 福田は不器用だが、生まれながらにしての点取り屋だった。「フォワードはエゴイストであるべき」と言ってはばからず、味方のフォワードが得点しても、喜ぶどころか悔しさを露わにした。また、ゴール前で自分より有利な位置に味方の選手がいることに気づいていても、パスを・・・