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連載

Book Reviewing Globe348

地図は復讐する

2013年5月号

The Revenge of Geography What the Map Tells Us About Coming Conflicts and the Battle Against Fate

 国際政治学の本質を権力闘争と見なす現実主義学派の泰斗、ハンス・モーゲンソーは、人間を突き動かす動機として古代ギリシャの歴史家ツキジデスがあげた恐怖、自己利益、名誉の三つの要素を重視し、世界史はこうした「人間の本性に根ざした力学」の結果であると論じた。「従って、世界をよくしようとするならば、これらの力学に逆らうのではなく、これらの力学に棹ささなければならない」と。

 冷戦後の「歴史の終焉」史観の崩壊と湾岸戦争とバルカンの悲劇、そして、中国の「平和台頭」の挫折とそれに伴う南シナ海、東シナ海をめぐる海洋権益葛藤を見るにつけ、地政学の復権をいやでも思い知らされる。

 地政学―冷戦期はイデオロギーの戦いの背後に、ポスト冷戦期もグローバル化の陰に隠れていた地図の復讐である。

 例えば、イランを例に取ってみよう。イラン・・・