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連載

不運の名選手たち47

阿久沢毅 (高校野球選手) プロ入りを拒んだ「最強打者」
中村計

2013年11月号

 群馬県立勢多農林高校の教諭、阿久沢毅は、プロ野球選手にならなかった理由をこれまでいくつも語ってきた。

「家庭の事情で親元を離れられなかった」「先生になりたかった」「自分の力量では通用しないと思った」「みんながプロへ行くと決めつけていたので、その期待に背いてやろうと思った」

 いったいどれが本当だったのか。

 戦後、プロ入りしなかった最強の打者―。阿久沢は今でもそう語り継がれる伝説のバッターだ。

 一九七八年春、桐生高校の主砲で一塁手だった阿久沢は選抜高等学校野球大会に出場し、準決勝で敗退したが、二回戦、三回戦で二試合連続本塁打を放った。この記録は早稲田実業の王貞治以来、二十年ぶりの快挙でもあった。

 特に一本目、高校生の左打者には難しいとされるレフト方向への本塁打は圧巻だった。そのインパクトの瞬間を捉えたのが左下の写真だ。阿久沢は芝居じみた笑みを浮かべながら自画自賛する。

「改めて見ると、いいね。ステイバックラインの形が。なかなか高校生には出せないライン・・・