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連載

日本の科学アラカルト 43

脳の謎にも迫る 多分野で研究される「神経」

2014年3月号

 にわかにSTAP細胞騒動が持ち上がり、先行するiPS細胞とともに日本の新たな再生医療技術が再び脚光を浴びている。  一言で「再生医療」と言うと臓器など比較的大きなものを人工的に作り上げることを思い浮かべる。しかし、肝臓や心臓といった目立つ巨大な臓器だけではなく、皮膚や網膜など人体のあらゆるパーツを幹細胞によって作ることが期待される。微細ではあるが重要性の高い人体パーツを挙げればきりがないだろうが、体中に存在し、人間の外部の情報を取り込み、それを脳に伝え、処理し、体の動きの命令を各部に伝えるという極めて重要な役割を担っているのはいわゆる「神経」である。  神経細胞(ニューロン)の仕組みや、働きは不明な点がいまだ多く残されている。こうしたシステムの謎を明らかにし、たとえば脳内における神経回路の仕組みを解明することは、人体の成り立ちはもちろん、人間の思想の根源にも迫る試みだ。医学、生物学はもちろん、その他の分野からもさまざまな手法でアプローチが行われている。  京都大学大学院生命科学研究科の上村匡教授と服部佑佳子特定助教らの研究グループは昨年十一月、異なる形状を持つ神・・・