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政治

安倍「強硬路線」が招く災厄

陰り始める一強官邸の「求心力」

2015年2月号

 イスラエルの首都エルサレムの旧市街地を一望できる「デービッド・シタデル・ホテル」のスウィートルーム。一月二十日朝、中東歴訪中の首相安倍晋三に外務省から緊急電話が入った。イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人の拘束を伝える映像が動画サイト「ユーチューブ」にアップされ、その連絡だった。安倍は自らユーチューブで動画を確認した。そこにはナイフをかざす黒服の大男の脇にオレンジ色の服を着せられ膝を突き座らされた日本人二人が映っていた。ジャーナリスト後藤健二(四十七歳)と湯川遥菜(四十二歳)。黒服の大男は英語で安倍を名指しして身代金を要求した。 「七十二時間以内に二億ドルを支払わなければ、二人を殺害する」  安倍は直ちに同行していた官房副長官世耕弘成、首席秘書官今井尚哉ら随員を緊急招集する。安倍はこの日予定されたパレスチナ自治政府訪問で議長のアッバスとの首脳会談と昼食会以外のすべてをキャンセルした。  再びエルサレムのホテルに戻ると、安倍はそこからヨルダン国王アブドラ、トルコ大統領エルドアン、エジプト大統領シシの三首脳に矢継ぎ早に電話を入れ、二人の救出について協力を要請した・・・