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イスラム国が潰れない「本当の理由」

主犯・米国「政策迷走」の大罪

2015年2月号

「イスラム国は人類の歴史に咲いたあだ花。現れては消える泡のようなものだ」。一月下旬、イスラム国出現の意義と今後の見通しを聞かれた訪日中のある産油国有識者は、苦虫を筋み潰したような顔をしてこう切り捨てた。  事実、イスラム国は追い詰められている。日本人人質事件の発生で、イラクとシリアにおけるイスラム国をめぐる戦況についての客観的な報道がかき消された感があるが、昨年八月以来、米国主導の有志連合による空爆の出撃回数は既に一千回を超え、ケリー米国務長官は「イスラム国幹部の五〇%を既に殺害した」と豪語した。  一月二十二日、ロンドンにおける有志連合参加二十一カ国の外相協議に出席したケリー国務長官のこの強弁と、「しかしイスラム国の撲滅にはなお数年かかる」という米国政府の公式説明は大いに矛盾している。それでも、空爆が一定の効果を上げていることは、紛れもない事実だ。日本人人質の殺害予告動画が公表された日にカタールのアルジャジーラが伝えたニュースは、昨年九月以来イスラム国勢力が拠点としていたシリア北部コバニ地区に隣接する高地をクルド民兵組織が四カ月ぶりに奪還した、というものであった。有志連合・・・