三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

誤審のスポーツ史 06

勝って汚れたゴルファー魂
中村 計

2015年6月号

 あるがままに打つ。そんなゴルフの理念とは、程遠いところで起きた誤審問題だった。

 二〇一三年三月に開催された国内女子ゴルフプロ・ツアー「アクサレディスゴルフトーナメントin宮崎」初日のこと。雨の影響でコース状態が悪く、ロッカールーム等に次のような追加特別競技規則の張り紙が掲げられた。

〈スルーザグリーンにある球は罰無しに拾い上げて拭くことができる。球を拾い上げる前に、プレーヤーはその位置をマークしなければならない(マークしなかった場合は一打の罰)〉

「スルーザグリーン」とは池やバンカーなどのハザード以外のことを指す。最初の一文が意味するのは、無罰で球を拾い泥などを拭き取ってもいいという「リフト・アンド・クリーン」だった。

 問題はそれに続く文章にあった。マークするとは球があった場所に目印としてコイン等を置くことだが、この文言を多くの選手は「リプレース」(球を元の場所に戻す)と理解した。しかし、堀奈津佳は「プリファードライ」(好きな場所へ戻す)と解釈したのだ。後者の場合は通常、マークした場所から一ク・・・