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連載

続・不養生のすすめ54

コレステロール、善玉・悪玉の噓(2)
柴田 博

2015年6月号

 先月号で、俗に善玉といわれるHDLコレステロールの測定を日本の住民で初めて行ったのは筆者たちであることを述べた。その内容を示した一九八一年の論文の中で、筆者は、HDLコレステロールを善玉コレステロールなどと軽々に呼ぶべきでないと警告している。十分な検証も行われないうちにレッテルを貼る風潮がすでに広がっていたためである。

 筆者が警告を発した理由はいくつかある。一つは、HDLコレステロールが高いほど心筋梗塞などの冠動脈性心疾患にかかりにくいことは、アメリカにおけるフラミンガム研究のみで示されたに過ぎなかったからである。まだ、フラミンガム以外の疫学研究で追試されていたわけではなかったのである。二つ目の理由は、有名な予防栄養学者アンセル・キーズ博士が、アルファリポタンパク質(=HDL)が高いとガンにかかりやすいという論文を発表していることである。

 アメリカの一地域における研究で、冠動脈性心疾患の発生がHDLコレステロールの高い群で少ないとされても、これを善玉と呼ぶのはまさに拙速である。ガンや感染症には逆の役割をするかもしれない。欧米の冠動脈性心・・・