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経済

孫正義に迫る 「最大の挫折」

ソフトバンク米通信子会社の「Xデー」

2016年4月号

 「私の中のイメージでは、スプリントがソフトバンクグループのこれから稼ぎ頭の一つになる。伸びしろが大きい。そこが、私がワクワクしているというところであります」
 ソフトバンクグループの孫正義社長は二月、第3四半期決算発表の場でこう虚勢を張ってみせた。
 同社子会社である米移動体通信スプリントの株価は、二年前の十ドルから三ドル水準にまで下落するなど重大局面を迎えている。これだけ騒がれている現在でさえ、純債務は二〇一五年三月期の二百九十六億ドルから十二月末で三百十五億ドルに増加している。
 だが、もう負債がどうのという話ではない。目の前のカネがないのだ。スプリントの現金は一五年三月末の四十億ドルから、十二月末には二十一億ドルまで減少している。同時点での流動比率(一五〇%以上が望ましい)は五九・三%、当座比率(一〇〇%以上が望ましい)は二九・三%、現金預金比率にいたっては一九・六%にまで低下している。何もしなければXデーは目前だ。
 すでにソフトバンクグループは同社株約八三%を保有しており、上場を続ける場合は資本注入もできない。今年から来年に・・・