三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

サウジ原油が抱える「二重リスク」

日量一千万バレル「供給途絶」の現実味

2016年11月号

 石油輸出国機構(OPEC)のサプライズ減産を演出し、原油価格反転のシナリオをリードするサウジアラビア。石油大国としての影響力を回復しつつ、「脱石油」戦略も進めるサルマン国王体制は一見、盤石だが、二つの危機が忍び寄っている。専横が目立つ国王と副皇太子の親子に対する王族内部の反発とサウジの原油輸出ルートである二つの海峡の裏で蠢くイランの影である。いずれもサウジからの日量一千万バレルの原油輸出を途絶させる危機の種子になりかねない。
 今年三月から四月にかけ、官邸と経済産業省にサウジに関する複数のリポートが米国からもたらされた。中東分析で定評のあるシンクタンクと中東に強い情報源を持つエネルギーコンサルタントなどが作成したものだ。そろって指摘したのはサルマン体制の安定性への懸念だった。リポートのひとつは「一九七五年の悲劇の再現を否定できない」という極論も付け加えていた。
 一九七五年三月二十五日、首都リヤドの王宮で外国使節団を迎えていたファイサル国王は、甥のムサーイド王子に三発の銃弾を撃ち込まれ、即死した。
 宮廷内で起きた王族間の暗殺劇は世界に衝撃を与えた。ファ・・・