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中国「日本人スパイ容疑者」の命運

不当拘束五人「見殺し」の安倍政権

2016年11月号

 中国を訪問したまま行方不明だった日本人男性が、今年七月に突如として中国の治安当局にスパイ容疑で拘束された「事件」は記憶に新しい。日中交流団体「日中青年交流協会」理事長の鈴木英司氏で、これに先立ち、中国当局は二〇一五年九月末から十月初めにかけて遼寧省、浙江省、北京市、上海市で四人の日本人がスパイ活動を展開していたとして拘束した。日本政府はスパイ容疑を全面否定する。ならば、この五人の日本人の解放に向け、中国に厳重に抗議すると同時に、国家の総力を挙げなければならないはずだが、日本政府は手をこまねいているだけ。このままではスパイ容疑で少なくとも懲役数年、司法の判断次第では十年超の有罪判決を受けかねない。安倍政権がその不作為により、同胞五人を「見殺し」のように捨て去れば、国家の尊厳を問われることになるだろう。
「私も中国に行けば拘束されてしまうのではないか……」。毎年春と秋、必ず二回訪中する東京の日中友好団体の男性役員は今年、迷った末、秋の訪中予定をキャンセルした。男性の長年の友人である鈴木氏が七月下旬、訪問先の北京で中国の治安当局にスパイ容疑で捕まったこ・・・