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連載

《世界のキーパーソン》ホル・コロモイスキーウクライナの億万長者

芸人新大統領を生んだ「黒幕」

2019年5月号

 ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』は、主人公一家がユダヤ人虐殺(ポグロム)を逃れ、故郷を追われる結末である。舞台となったのは現在のウクライナ。今も反ユダヤ主義が残るこの国で、ユダヤ系のウォロディミル・ゼレンスキーが大統領に選ばれたのは、画期的なできごとだった。

 四十一歳のお笑い芸人には、ポロシェンコ陣営から「麻薬中毒」「クレムリンの工作員」「オリガルヒ(新興財閥)、コロモイスキーの操り人形」など、様々なレッテルが貼られた。このうち、最後のものだけには根拠がある。

 出入国記録によると、ゼレンスキーは過去二年間で少なくとも十三回、スイス・ジュネーブかイスラエル・テルアビブに旅行している。どちらもコロモイスキーが住んでいる都市だ。

 芸人の出世作「国民のしもべ」を放送したのも、彼の選挙宣伝を無限に流したのも、コロモイスキー傘下の放送局だった。陣営の使う自動車、警護もすべて提供された。次期大統領が何者なのか、どんな政策をとるのかは、黒幕の思惑を探らなければならない。

 ソ連時代の一九六三年、ドニエ・・・