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連載

西風462

ノーベル賞と京大の「校風」

2019年11月号

「このまま劣化を続けるなら京都大学は廃校にすればいい」
 京大法学部のある老教授は物騒な感想を漏らす。よくも悪くもあった「京大らしさ」が急速に失われているのだという。
 十月、京大に関する良いニュースと悪いニュースがあった。
 良いニュースは、昨年の本庶佑・京大特別教授に続き、今年のノーベル賞でも京大出身の吉野彰氏の化学賞受賞が決まったことだ。
 二十世紀中、自然科学分野での日本のノーベル賞受賞者は第一号の湯川秀樹博士を筆頭として四人が京大出身だった。一方で東京大学出身者は一九七三年に物理学賞受賞の江崎玲於奈氏ただ一人。「ノーベル賞といえば京大」というのは京都人にとってもある種の誇りだった。二十一世紀に入ると、自然科学分野での東大出身受賞者も増えてきた。それでもなお、他大学出身の山中伸弥ⅰPS細胞研究所所長など京大にゆかりのある受賞者もおり、今年の吉野氏の受賞によって京都人の「さすが京大さん」という評価は保っている。
 一方の悪いニュースは関西電力の高浜原発を巡る金品受領問題で、OBが醜態を晒したことだ。みっともない会見をした八木誠前会・・・