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連載

新・大学評判記 第2話

東京大学  「ヘイト事件」で顕在化した財政窮状

2020年2月号

「太った豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ」
 一九六四年三月、東京大学の卒業式で当時の総長、大河内一男氏が用意した式辞にあったこの言葉がジョン・スチュアート・ミルの言葉を意訳したものであることは有名なエピソードだ。「満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい」といった原文を独自に言い換えたことで、名言として残った。ともあれ、大河内氏が日本の最高学府を巣立つ若者に伝えたかった意図は明白だ。五十年以上が経過した今、東大は果たして、目先の利益にとらわれず誇りを持っているのだろうか。
「現状の東大の懐事情を表す、ひとつの象徴的な事件に過ぎない」
 東大のとある理系の中堅研究者はこう語る。「事件」とは昨年十一月からネットで炎上したある騒動のことを指している。簡単に経緯を振り返ると、直接のきっかけとなったのは「東大最年少准教授」と自称する大澤昇平氏が十一月二十日にツイッターで「弊社Daisyでは中国人は採用しません」「中国人のパフォーマンスは低いので営利企業じゃ使えないっすね」と相次いで書き込んだことだった。東大教員が公然とヘイト発言をしたことで・・・

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