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社会・文化

壮大な利権「観光業救済事業」

血税一兆円に群がる政治家と業界

2020年6月号

 緊急事態宣言が全国で解除され、様子を窺いながらではあるものの経済活動が再開し始めている。ありとあらゆる業界がダメージを負う一方で、政府や自治体による支援策も実施されつつある。そんな中、新型コロナウイルス感染拡大の初期段階から影響を受けた観光業界には一兆円を超える破格の血税が投入されようとしている。ホテルや旅客業界が深刻な状況にあることは論を俟たないが、一方で「なぜ観光業がこれだけ優遇されるのか」という素朴な疑問が湧く。内幕をみると、旅行業界があらゆるチャネル、パイプを使って政界を動かし、支援策を引き出したことがわかる。
 四月三十日に成立した第一次補正予算に組み込まれたのが、総額約一兆七千億円に上る新型コロナ関連の経済対策「Go Toキャンペーン」だ。各地の飲食店やイベントなどへの補助金も含まれるが、約一兆円は観光業界を対象とした「Go To Travel」に充当される。
「制度設計の段階から、旅行会社救済を念頭に置いた制度になっていた」
 こう語るのは経済産業省の関係者だ。同省はキャンペーンの事務局を担い、国土交通省や観光庁などを従えて今回の補助制度の・・・