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連載

Book Reviewing Globe 438

今こそ「警告学」のススメ

2020年11月号

 戦争、テロ、パンデミック、環境破壊、遺伝子組み換え、AIシンギュラリティー、金融危機といった、人々の生存や健康、財産や経済社会のインフラを根本から脅かす脅威がグローバル化、巨大都市化、技術革新、経済格差と疎外層の拡大などによってますます破壊性を増している。
 政府も企業もそれらの脅威のうちの「最悪のシナリオ」を描き、それに備え、その分析・予測を行う専門家集団を必要としている。この本はその分野のプロが、迫りくるさまざまな危機への「警告」をいかにして指導層と社会に説得的な形で伝えるかを探求した「警告学」のススメの本である。
 湾岸戦争のとき、チャーリー・アレンは米国家情報会議(NIC)の十人の国家情報官の一人だった。彼の持ち場は国家的脅威に対する警鐘を鳴らす「警告」担当である。このポストの背景にはパールハーバー攻撃がある。日本が米国を攻撃するとの情報は国務省、軍、情報系統にそれこそ洪水のように流れ込んでいた。しかし、それらを統括し、「いつ、どこで、どのように」攻撃があるかを分析する担当官がいなかった。情報系統は「戦略的警告」は行ったものの、「戦術的警告」に失敗した。ア・・・