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政治

石破茂「政治的自決」の自業自得

《政界スキャン》

2020年11月号

「総理になれなかった男たち」列伝という政治論の人気テーマがある。古くは、緒方竹虎、河野一郎、大野伴睦、藤山愛一郎、前尾繁三郎……。平成以降では、安倍晋太郎、渡辺美智雄、加藤紘一、河野洋平、谷垣禎一、そして小沢一郎らの各氏が、定番の登場人物だ。彼らの伝記は、最高権力者の座を巡る政界力学の妙、指導者の要件を裏面から探る格好の素材となる。ただし、あくまでなろうとしてなれなかったことが条件で、本気でなろうとしなかった男たちはその限りではない。
 新たな一人が、そこに加わる。石破茂元自民党幹事長。石破派会長を突然辞任し、総裁選出馬からの引退を事実上宣言したからだ。本人がいくら否定しても、石破派は元々は派閥を否定してきた石破氏が、総裁選の推薦人二十人を確保するために持説を曲げて設立した、石破氏の、石破氏による、石破氏のための派閥である。当の石破氏が去る以上、もはや存在理由はない。確かな推薦人も常備せずに、ひょっとしてチャンスがあったら、また出るなどという選択肢もあり得ない。
 それにしても「今回は勝てないと分かっていながら、なぜ立候補したんだ。自分の・・・